こんばんは。
おかめです。
今夜のブログは前回に引き続き感想ブログ。
今回お届けする感想は集英社文庫から 透明な夜の香り 千早茜 です。
元・書店員の一香は、古い洋館の家事手伝いのアルバイトを始める。
そこでは調香師の小川朔が、幼馴染の探偵・新城とともに、客の望む「香り」を作っていた。どんな香りでも作り出せる朔のもとには、風変わりな依頼が次々と届けられる。一香は、人並み外れた嗅覚を持つ朔が、それゆえに深い孤独を抱えていることに気が付き――。香りにまつわる新たな近くの扉が開く、ドラマティックな長編小説。
という背表紙の内容です。
なぜこの小説を購入したかと言いますと、2点ありまして
まず、表紙がいいじゃないですか。
暗い部屋の木製のテーブルのようなところに雑におかれた植物。
深夜の静まり返った部屋に、微かにグリーンが匂いそう。
なのに、手前にある手の置物が、血色感と行き場を失ってそうでちょっとミステリアス。
これはいったいどんな物語?と惹かれたのです。
2つ目は、私が単純に香りが好きで、ハーブやアロマは仕事でも使っていて日常に取り入れているから。っていう。
もう読んだのが数か月前になるので正直はっきりと記憶はないのですが
文章のあらゆるところに散りばめられているハーブや草花の名前が
料理や香り作りや身近な風景として出てきて、その都度香りが届くような感覚で楽しめた。
文章はとても丁寧で、でも無駄な描写がなく、頭の中で物語が映像化して流れていくにはちょうどいいテンポで、ちょうどいい表現に感じた。
そこに今回は香りが入ってくるのだから、透明な夜の香りの世界を満喫できた。
物語の説明は割愛してネタバレの感想だけをつづっていくけれど
朔さんの元に調香の依頼でやってくる人々の目的や末路のエピソードも個人的には面白かった。
朔さんに調香を依頼するぐらいなので、もちろん市販では手に入らない香りの依頼をされるわけですよね。
ただ、この香りを探している だけではなくて、求めている香りでなければいけないから、市販の近しい香りではなく、朔さんに依頼をするわけです。
朔さんに依頼される香りは、依頼者たちの秘密の香り。
何かの目的をもって、願望をもって訪れる。
嗅げば募る。
とある依頼者の末路を見届けた後の朔さんの言葉。
秘密の香りを嗅ぐということは、秘密を抱き続けなければいけない。
その覚悟が必要な程、香りとは強烈に人の記憶に残り感情を動かす。
そんな経験、きっと誰でもあると思うのよね。
幼い頃に母がキッチンに立って作っていた料理の香り
昔好きな人がつけていた香水の香り
学生時代、なんとも思っていなかった女子の髪から漂った香り
好きな人とデートで行った先で出会った香り
とかさ。
それまで全く思い出す事なんてなかったけど、似た匂いをかいだことで「あれ?なんか知ってるかも……」とか。記憶と共に感情もざわついたりね。
物語の終盤に向かって、朔さんや一香の望みやトラウマが掘り下げられていく。
家事手伝いとして採用するにあたり、全ての香りがするもの・体に影響を及ぼすものに関しては朔さんの管理と提供の元、それを取り入れる必要があった。
化粧品や洗剤、口に運ぶものまで。
朔さんの元で働いている期間、朔さんの選んだものだけで生活をする一香は、まるで朔さんが調香している作品のようだと……
その感覚は、朔さんの中では誰にも汚されたくないものとなり
一香にとっては、一番身近で世話をし理解をしている、尊敬する調香師の作品となる。
朔さんの鋭い嗅覚は、草花の香りだけでなく、感情から変化する体臭の変化やあらゆる香りを察する事ができる。
そしてその香りから行動の推測や記憶を手繰り寄せもする。
朔さんは、一香の秘密の香りを不意打ちでかがせ記憶を蘇らせる。
一気に秘密をこじ開けられた一香の記憶は、家族の死を無視したという罪の記憶。
その日のその空間の香りを再現する事で、一香がずっと曖昧にし忘れていた記憶を蘇らせた。
その意図は、朔さんが一香を傷つける為。
私ね、この流れがすごく楽しかったなぁ。
人のトラウマをこじ開けるって、すごくイチかバチかみたいなところがあるでしょう?
イチかバチかっていうか、安易に触れてはいけない部分。
でも朔さんのその気持ちがめちゃくちゃ分かる。
文中に出てくる「執着と愛着の違い」について、朔さんは一香に執着している自分に怖くなり、同時にそれにより一香が朔さんに対する感情の変化を嗅ぎ取る事を避けたかった。
その事態を避けるべく、先手を打って一香を傷つける。
あえて一番一香が傷つくであろう、一香の秘密の香りを使って。
も~めちゃくちゃ可愛いですやーんってなるよね~。
いや、恐怖でしかないのだけど、嫌われる前に嫌われる事しちゃえ!みたいな。
それを香りでしちゃうってめちゃめちゃいけない調香師!笑
結局、一香はその一件で解雇されることになるけど
薔薇の季節に新城の計らいで再会し、朔さん自身が一香への気持ちが執着ではなく愛着だと受け入れることで、一香とまた時間を過ごすことができましたとさ。
という流れ。
かなり端折ってしまっているけれど。
これね、私の中では再読したい小説に入った。
朔さんの感情はどちらかというといつも一定で、淡々としている。
人並み外れた天才的な嗅覚の持ち主であると同時に、抱えている闇や傷を隠すような一定の感情。
だからこそ描写の丁寧さが朔さんの空間とその場面場面の香りを感じられる。
一方で感情が激しい新城や、やや平穏を装いつつも感情的な面ももつ一香のシーンとのコントラストみたいなものも、世界観に入り込める要素だったのかなと。
植物に全く興味がないと、正直聞き馴染みのない名称や
想像のつかない匂いが出てくるとは思うので
それがどう感想に影響するのだろう?とは思うけれど
香りがある程度好きで、ちょっとならハーブとかも知ってるよ!という人は楽しめるのじゃないでしょうか。
私はいつも頭の中で物語が映像化されていくので
坂を上って並木道の腐葉土の香りがする森にある洋館も
源さんが育てているミント達の香りも
朔さんに依頼をした藤崎が秘密の匂いを嗅いだであろうシーンも、その感情も
一香が朔さんの為にキッチンに立ち淹れる紅茶とその香りも
それらが映像化されて、香りを脳に再現させるには十分な描写で、楽しめました!
恋愛の絡みが少ない事もよかった。最後らへんはちょっと「おぉん?」ってなったけど。笑
でも、それは朔さんの成長だったのでしょう。
香りがいかに人の記憶にとどまり、それを嗅ぎ思い出した時に感情が揺さぶられるかというのを、あらゆる角度から体験させてくれた物語でした。
ちなみに私も過去、付き合っていた男性のトラウマをイチかバチかであえてオープンしたことがありまして
すごく身勝手だったなぁーと今となっては反省していますが
それがきっかけでカウンセラーの勉強を始め、資格も取得できました。
えっと、その節は大変お世話になりました。お元気でしょうか。お元気だといいけれど。
話しは戻って
私の中では朔さんって、本郷奏多さんっぽいイメージだなぁと思い読んでたけど
どうなんだろなぁ~。
おかめ
